ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵 |
HOME|ブログ本館|美術批評|東京を描く|動物写真|英詩と英文学|西洋哲学 |プロフィール|掲示板 |
![]() |
第五圏にはスュクスという沼がある。その沼には泥にまみれた人々が互いにきずつけあっていた。その様を二人は見る。 ステュクスは、ギリシャ神話に出てくる冥界の五つの川の一つで、地獄を七巻きすることになっているが、ここでは地獄の第五圏にある沼ということにされている。 我等この獄を過ぎてかなたの岸にいたれるに、こゝに一の泉ありて湧きこゝより起れる一の溝にそゝげり 水の黒きことはるかにペルソにまさりき、我等黯める波にともなひ慣れざる路をつたひてくだりぬ この悲しき小川はうす黒き魔性の坂の裾にくだりてスティージェとよばるゝ一の沼となれり こゝにわれ心をとめて見んとて立ち、この沼の中に、泥にまみれみなはだかにて怒りをあらはせる民を見き かれらは手のみならず、頭、胸、足をもて撃ちあひ、齒にて互に噛みきざめり 善き師曰ふ、子よ、今汝は怒りにけしものゝ魂を見るなり、汝またかたく信すべし この水の下に民あることを、かれらその歎息をもて水の面に泡立たしむ、こはいづこにむかふとも汝の目汝に告ぐる如し 泥の中にて彼等はいふ、日を喜ぶ麗しき空氣のなかにも無精の水氣を衷にやどして我等鬱せり 今我黒き泥水のなかに鬱すと、かれらこの聖歌によりて喉に嗽す、これ全き言にてものいふ能はざればなり かくして我等は乾ける土と濡れたる沼の間をあゆみ、目を泥を飮む者にむかはしめ、汚き瀦の大なる孤をめぐりて つひに一の城樓の下にいたれり(地獄篇第七曲から、山川丙三郎訳) 絵は、ステュクス(スティージェ)の沼で互いにいがみ合う人々を描く。 |
HOME|神曲への挿絵|次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |