ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵 |
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第七圏へ下る行く手に崖があり、その一角にミノタウロスが立ちふさがっていた。ミノタウロスはクレテの王ミノスの子であるが、ミノスがポセイドンに生贄を捧げなかったことで怒りを買い、子どもを醜い怪物の姿にされてしまった。その姿は、半人半牛とされている。 ミノタウロスは、ダンテらのことを、どうやらテーセウスの一味と勘違いして怒っているらしいのだが、ヴィルジリオが彼を一層怒らせ、怒り狂っている間に、二人はその脇を通りぬけて進んで行く。 岸をくだらんとて行けるところはいと嶮しく、あまつさへこゝに物ありていかなる目にもこれを避けしむ トレントのこなたに、或は地震へるため、或は支ふる物なきため、横さまにアディーチェをうちし崩壞あり くづれはじめし山の巓より野にいたるまで岩多く碎け流れて上なる人に路を備ふるばかりになりぬ この斷崖の下るところまたかくの如くなりき、くだけし坎の端には模造の牝牛の胎に宿れる クレーチの名折偃しゐたり、彼我等を見て己が身を噛みぬ、そのさま衷より怒りにとらはれし者に似たりき わが聖彼にむかひて叫びていひけるは、汝を地上に死なしめしアテーネの公こゝにありと思へるか 獸よ、たち去れ、彼は汝の姉妹の教へをうけて來れるならず、汝等の罰をみんとて行くなり 撲たれて既に死に臨むにおよびて絆はなれし牡牛の歩む能はずしてかなたこなたに跳ぬることあり 我もミノタウロのしかするを見き、彼機をみてよばゝりていふ、走りて路を得よ、彼狂ふ間にくだるぞ善き かくて我等はくづれおちたる石をわたりてくだれり、石は例ならぬ重荷を負ひ、わが足の下に動くこと屡々なりき(地獄篇第十二曲から、山川丙三郎訳) 絵は、ダンテとヴィルジリオの前に立ちふさがる半人半牛の怪物ミノタウロス。後脚で踏ん張り、前脚を大きく動かし、二人を威嚇している。その剣幕にダンテはおそれをなし逃げようとするが、ヴィルジリオは敢然として立ち向かう。 |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |