ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵
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橋の下の悪鬼たち:ブレイクの「神曲」への挿絵



ダンテとヴィルジリオが更に悪鬼たちの様子を見ていると、悪鬼たちは、煮えたぎるプールに放り込んだ執政官を、スープの中の肉をフォークでつつくように、熊手でつついた。悪鬼たちは、その熊手をヴィルジリオにも向けたのだったが、ヴィルジリオは一向に恐れる様子を見せない。

 彼沈み、背を高くして再び浮べり、されど橋を戴ける鬼共叫びていひけるは、聖顏もこゝには益なし 
 こゝに泳ぐはセルキオに泳ぐと異なる、此故に我等の鐡搭好ましからずばこの脂の上にうくなかれ 
 かくて彼等は彼を百餘の鐡鉤に噛ませ、こゝは汝のかくれて踊る處なれば、盜みうべくば目を掠めてなせといふ 
 厨夫が庖仕に肉叉をもて肉を鍋の眞中に沈めうかぶことなからしむるもこれにかはらじ 
 善き師我に曰ふ、汝は汝のこゝにあること知られざるため、岩の後にうづくまりておのが身を掩へ 
 またいかなる虐わが身に及ぶも恐るゝなかれ、さきにもかゝる爭ひにのぞめることあれば我よくこれらの事を知る 
 かくいひて橋をわたりてかなたにすゝめり、げにそのさわがぬ氣色をみすべきは彼が第六の岸にいたれる時なりき 
 その怒りあらだつさまはさながら立止まりてうちつけに物乞ふ乞食にむかひて群犬はせいづる時の如く 
 小橋の下より出でし鬼共みなその鐡搭を彼にむけたり、されど彼よばゝりていふ、汝等いづれも惡意をいだくことなかれ 
 鐡搭の我をとらふる前に、汝等のひとりすゝみいでゝわがいふところのことをきゝ、のち相謀りて我を之にかくべきや否やをさだめよ(地獄篇第二十一歌から、山川丙三郎訳) 

絵は、翼の生えた悪鬼が、煮えたぎるプールに浮かぶ執政官を、熊手でつついている様子と、その傍らにいる仲間の悪鬼たちを描いている。





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