ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵 |
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群がる悪鬼たちの中に頭目と思しき悪鬼がいて、それにヴィルジリオが声をかける。ヴィルジリオは悪鬼に恐れを抱かぬが、ダンテの方は恐怖に囚われる。そのダンテに、他の悪鬼たちが襲い掛かろうとすると、頭目の悪鬼がそれを制止する。 頭目の悪鬼がいうには、このまま橋伝いに第六の嚢に行くことは出来ぬ。そこへ行くには、第五の嚢の縁伝いに行くがよかろうと。 彼等皆叫びてマラコダ行くべしといふ、即ちその一者進み出で(他はみな止まれり)かくするも彼に何の益かあるといひつゝ彼に近づけり わが師曰ひけるは、マラコダよ、われ天意冥助によらずして今に至るまですべて汝等の障礙をまのかれ こゝに來るをうべしと汝思ふや、我等を行かしめよ、わがこの荒れたる路をひとりの者に教ふるも天の定むるところなればなり 此時彼の慢心折れ、彼は鐡搭をあしもとにおとして彼等にいふ、かくては彼を撃ちがたし 導者我に、橋の岩間にうづくまる者よ、いまは安らかにわがもとにかへれ 我いでゝいそぎて彼の處にいたれば、鬼ことごとく進みいづ、我はすなはち彼等が約を履まざらんことをおそれぬ 嘗て契約によりてカープロナをいでし歩兵の一軍群がる敵の間にありてまたかく恐るゝを見しことあり 我は全身を近くわが導者によせ、目をよからぬ彼等の姿より放つことなかりき 彼等は鐡鉤をおろせり、その一者他の一者にいふ、汝わが彼の臀に觸るゝをねがふや、彼等答へて、然り一撃彼にあつべしといふ されどわが導者と言をまじへし鬼たゞちにふりかへりて、措け措け、スカルミリオネといひ さて我等に曰ひけるは、是より先はこの石橋をゆきがたし、第六の弓門悉く碎けて底にあればなり されば汝等なほさきに行くをねがはゞこの堤を傳ひてゆくべし、近き處にいま一の石橋あり、これぞ路なる 昨日は今より五時の後にてこの路こゝにくづれしこのかた千二百六十六年を滿たせり 我は此等の部下を分ちてかなたに遣はし、身を干す者のありや否やを見せしむべければ、汝等之と共に行け、彼等禍ひをなすことあらじ 座っているのが悪鬼の頭目マラコダ、それに向かってヴィルジリオが話しかけている。 |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |