ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵 |
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ダンテらがさらに進んで行くと、これまでにみたどの巨人よりも巨大な者にあう。彼はほかの者たちとは異なり、戒めを受けてもおらず、また下半身を埋められてもいない。全身裸のままである。ギリシャ神話にでてくる勇者であり、ポセイドンとガイアの間に生まれた巨人だ。名をアンタイオス(アンテオ)という。 ヴィルジリオがアンテオに向かって話しかけると、アンテオはヴィルジリオを手に握りしめる。するとヴィルジリオはダンテを自分の身に引きよせ、二人もろともアンテオの手で地獄の最後の圏に下してもらう。 我等すゝみてアンテオに近づけり、彼は岩窟より外にいづること頭を除きて五アルラを下らざりき あゝアンニバールがその士卒と共に背を敵にみせし時、シピオンを譽の嗣となせし有爲の溪間に そのかみ千匹の獅子の獲物をはこべる者よ(汝若し兄弟等のゆゝしき師に加はりたらば地の子等勝利をえしものをと いまも思ふものあるに似たり)、願はくは我等を寒さコチートを閉すところにおくれ、これをいとひて 我等をティチオにもティフォにも行かしむる勿れ、この者よく汝等のこゝに求むるものを與ふるをうるがゆゑに身を屈めよ、顏を顰むる勿れ 彼はこの後汝の名を世に新にするをうるなり、彼は生く、また時未だ至らざるうち恩惠彼を己が許によぶにあらずばなほ永く生くべし 師かく曰へり、彼速かに嘗てエルクレにその強みをみせし手を伸べてわが導者を取れり ヴィルジリオはおのが取られしをしりて我にむかひ、こゝに來よ、我汝をいだかんといひ、さて己と我とを一の束とせり 傾ける方よりガーリセンダを仰ぎ見れば、雲その上を超ゆる時これにむかひてゆがむかと疑はる われ心をとめてアンテオの屈むをみしにそのさままた斯くの如くなりき、さればほかの路を行かんとの願ひもげにこれ時に起れるなるを 彼は我等をかるやかにジユダと共にルチーフェロを呑める底におき、またかくかゞみて時ふることなく 船の檣の如く身を上げぬ(地獄篇第三十一曲から、山川丙三郎訳) 絵は、巨人アンテオが、ヴィルジリオとダンテを手で握り、地獄の底に下すところを描く。 |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |