ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵
HOMEブログ本館美術批評東京を描く動物写真英詩と英文学西洋哲学 プロフィール掲示板




自分の死に様を語るウゴリーノ:ブレイクの「神曲」への挿絵



もつれあいながらも、他人の頭にかじりついていた男がダンテに気づいて声をかけ自分の名を名乗る。彼はピサの執政官を勤めていたが、「ピサを敵に売り渡した罪」で投獄され、獄死した。彼が死後地獄のもっとも深い部分に落されたのは、祖国への裏切りの罪によるものだったのだ。

だがウゴリーノは、自分は他人に陥れられたのだと主張する。彼が今頭をかじっている人間は、彼を陥れたその人物だというのだ。

 かの罪人口をおそろしき糧よりもたげ、後方を荒らせし頭なる毛にてこれをぬぐひ
 いひけるは、望みなき憂ひはたゞ思ふのみにて未だ語らざるにはやくも我心を絞るを、汝これを新たならしめんとす
 されどわが言我に噛まるゝ逆賊の汚辱の實を結ぶ種たりうべくば汝はわがかつ語りかつ泣くを見ん
 我は汝の誰なるをも何の方法によりてこゝに下れるをも知らず、されどその言をきくに汝は必ずフィレンツェの者ならん
 汝知るべし、我は伯爵ウゴリーノ此は僧正ルツジェーリといへる者なり、いざ我汝に何によりてか上る隣人となれるやを告げん
 彼の惡念あらはるゝにおよびて彼を信ぜる我とらへられ、のち殺されしことはいふを須ひず
 されば汝の聞きあたはざりし事、乃ちわが死のいかばかり殘忍なりしやは汝聞きて彼我を虐げざりしや否やを知るべし(地獄篇第三十三曲から、山川丙三郎訳)

絵は、ダンテらの前にうずくまるウゴリーノと、彼を陥れたことで責められているルッジェーリを描く。





HOME神曲への挿絵次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである