ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵 |
HOME|ブログ本館|美術批評|東京を描く|動物写真|英詩と英文学|西洋哲学 |プロフィール|掲示板 |
![]() |
ヴィルジリオは小カトーの指示に従い、煉獄山の麓の海辺へとダンテを誘い、そこでダンテの顔を水で浄めさせた後、イグサの茎を抜いてダンテの腰に巻きつける。この時、二人は地獄を出て以来初めて太陽の上るところを見る。 かくいひて見えずなりにき、我は物言はず立ちあがりて身をいと近くわが導者によせ、またわが目を彼にそゝげり 彼曰ふ。子よ、わが歩履に從へ、この廣野こゝより垂れてその低き端におよべばいざ我等後にむかはむ。 黎明朝の時に勝ちてこれをその前より走らしめ、我ははるかに海の打震ふを認めぬ 我等はさびしき野をわけゆけり、そのさま失へる路をたづねて再びこれを得るまでは たゞ徒に歩むことぞと自ら思ふ人に似たりき 露日と戰ひ、その邊の冷かなるためにたやすく消えざるところにいたれば わが師雙手をひらきてしづかに草の上に置きたり、我即ちその意をさとり 彼にむかひて涙に濡るゝ頬をのべしに、彼は地獄のかくせる色をことごとくこゝにあらはせり かくて我等はさびしき海邊、その水を渡れる人の歸りしことなきところにいたれり こゝに彼、かの翁の心に從ひ、わが腰を括れるに、奇なる哉謙遜の草、彼えらびてこれを採るや その抜かれし處よりたゞちに再び生ひいでき 絵は、上る太陽を望みながら、ヴィルジリオがダンテにイグサの茎を巻きつけうようとするところを描く。 |
HOME|神曲への挿絵|次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |