ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵 |
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眠るダンテは、一羽の鷲が富んできて、彼をかかえて大空を飛ぶ夢を見る。目覚めると脇にはヴィルジリオがいて、ダンテが寝ていた時におきたことを語る。聖ルチーアが眠れるダンテを抱き、煉獄の入り口まで運んでくれたというのだ。 我は夢に、黄金の羽ある一羽の鷲の、翼をひらきて空に懸り、降らんとするをみきとおぼえぬ また我はガニメーデが攫はれて神集にゆき、その侶あとに殘されしところにゐたりとおぼえぬ 我ひそかに思へらく、この鳥恐らくはその習ひによりて餌をこゝにのみ求むるならむ、恐らくはこれを他の處に得て持て舞上るを卑しむならむと さてしばらくめぐりて後、このもの電光のごとく恐ろしく下り來りて我をとらへ、火にいたるまで昇るに似たりき 鳥も我もかの處にて燃ゆとみえたり、しかして夢の中なる火燒くことはげしかりければわが睡りおのづから破れぬ かのアキルレが、目覺めてそのあたりを見、何處にあるやをしらずして身をゆるがせしさまといふとも (こはその母これをキロネより奪ひ、己が腕にねむれる間にシロに移せし時の事なり、その後かのギリシア人これにかしこを離れしむ) 睡顏より逃げしときわがうちふるひしさまに異ならじ、我はあたかも怖れのため氷に變る人の如くに色あをざめぬ わが傍には我を慰むる者のみゐたり、日は今高きこと二時にあまれり、またわが顏は海のかたにむかひゐたりき わが主曰ふ。おそるゝなかれ、心を固うせよ、よき時來りたればなり、汝の力をみなあらはして抑ふるなかれ 汝は今淨火に着けり、その周邊をかこむ岩をみよ、岩分るゝとみゆる處にその入口あるをみよ 今より暫し前、晝にさきだつ黎明の頃、汝の魂かの溪を飾る花の上にて汝の中に眠りゐたるとき ひとりの淑女來りて曰ふ、我はルーチアなり、我にこの眠れる者を齎らすを許せ、我斯くしてその路を易からしめんと ソルデルとほかの貴き魂は殘れり、淑女汝を携へて日の出づるとともに登り來り、我はその歩履に從へり 彼汝をこゝに置きたり、その美しき目はまづ我にかの開きたる入口を示せり、しかして後彼も睡りもともに去りにき(煉獄篇第九曲から、山川丙三郎訳) 絵は、ダンテを抱いて煉獄の入り口にむかうルチーア。ヴィルジリオが彼女の後に従う。 |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |