ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵 |
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ダンテとヴィルジリオは煉獄の門に向かって進む。門の前には三段の階段があり、その上に天使が坐している。天使はダンテらを誰何し、彼らが天の淑女(ベアトリーチェ)の計らいによってここまで来たことを知るや、煉獄の門に導くべく、彼らを進ましむ。 眞あらはるゝに及び、疑ひ解けて心やすんじ、恐れを慰めに變ふる人のごとく 我は變りぬ、わが思ひわづらふことなきをみしとき、導者岩に沿ひて登り、我もつづいて高處にむかへり 讀者よ、汝よくわが詩材のいかに高くなれるやを知る、されば我さらに多くの技をもてこれを支へ固むるともあやしむなかれ 我等近づき、一の場所にいたれるとき、さきにわが目に壁を分つ罅に似たる一の隙ありとみえしところに 我は一の門と門にいたらんためその下に設けし色異なれる三の段と未だ物言はざりしひとりの門守を見たり またわが目いよいよかなたを望むをうるに從ひ、我は彼が最高き段の上に坐せるをみたり、されどその顏をばわれみるに堪へざりき 彼手に一の白刃を持てり、この物光を映してつよく我等の方に輝き、我屡々目を擧ぐれども益なかりき 彼曰ふ。汝等何を欲するや、その處にてこれをいへ、導者いづこにかある、漫りに登り來りて自ら禍ひを招く勿れ。 わが師彼に答へて曰ふ。此等の事に精しき天の淑女今我等に告げて、かしこにゆけそこに門ありといへるなり。 門守ねんごろに答へていふ。願はくは彼幸の中に汝等の歩みを導かんことを、さらば汝等我等の段まで進み來れ。 我等かなたにすゝみて第一の段のもとにいたれり、こは白き大理石にていと清くつややかなれば、わが姿そのまゝこれに映りてみえき 第二の段は色ペルソより濃き、粗き燒石にて縱にも横にも罅裂ありき 上にありて堅き第三の段は斑岩とみえ、脈より迸る血汐のごとく赤く煌けり 神の使者兩足をこの上に載せ、金剛石とみゆる閾のうへに坐しゐたり この三の段をわが導者は我を拉きてよろこびて登らしめ、汝うやうやしく彼にとざしをあけんことを請へといふ(煉獄篇第九曲から、山川丙三郎訳) 絵は、煉獄の門を前にしたダンテとヴィルジリオ。門の前の三段の石段は、本文に忠実に描かれ、その門の上に坐している天使は、老人の姿で表されている。 |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |