ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵
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嫉妬者たちのテラス:ブレイクの「神曲」への挿絵



ダンテとヴィルジリオは山道を登ってやがて第二の冠にさしかかる。ここは嫉妬の罪を犯した者が配置され、寛大の徳の功徳によって浄められるのを待つところ。彼らは、乞食のように粗末な姿で群をなし、瞳を鉄の糸で縫いつけられているために、太陽を見ることができない。

彼らの一群の中から、ダンテに話しかける一人の女性がいた。ダンテが名を尋ねると、シャーナのサピアだと答え、自分の身に降りかかった出来事について語る。


 この時善き師。この圈嫉妬の罪をむちうつ、このゆゑに鞭の紐愛より採らる 
 銜は必ず響きを異にす、我の量るところによれば、汝これを赦の徑に着かざるさきに聞くならむ 
 されど目を据ゑてよくかなたを望め、我等の前に坐する民あり、各々岩にもたれて坐せり。 
 このとき我いよいよ大きく目を開きてわが前方を望み、その色石と異なることなき衣を着たる魂を見き 
 ・・・
 彼等は粗き毛織を纏へる如くなりき、互ひに身を肩にて支へ、しかして皆岸にさゝへらる 
 生活の途なき瞽等が赦罪の日物乞はんとてあつまり、彼頭を此に寄せ掛け 
 詞の節によるのみならず、その外見によりてこれに劣らず心に訴へ、早く憐を人に起さしめんとするもそのさままた斯の如し 
 また日が瞽の益とならざるごとく、わがいま語れるところにては、天の光魂に己を施すを好まず 
 鐡の絲凡ての者の瞼を刺し、これを縫ふこと恰もしづかならざる鷹を馴らさんとする時に似たりき 
 ・・・
 我は彼等の中にわが言を待つ状なる一の魂を見き、若し人いかなる状ぞと問はば、瞽の習ひに從ひてその頤を上げゐたりと答へむ 
 我曰ふ。登らむために己を矯むる魂よ、我に答へし者汝ならば、處または名を告げて汝の事を我に知らせよ。 
 答へて曰ふ。我はシエーナ人なりき、我これらの者と共にこゝに罪の生命を淨め、御前に泣きて恩惠を求む 
 われ名をサピーアといへるも智慧なく、人の禍ひをよろこぶこと己が福ひよりもなほはるかに深かりき 
 汝我に欺かると思ふなからんため、わがみづからいふごとく愚なりしや否やを聞くべし、わが齡の坂路はや降りとなれるころ(煉獄篇第十三曲から、山川丙三郎訳)


絵は、嫉妬者の一群を前にするダンテとヴィルジリオ。その一群の中から一人が飛び出して来て、ダンテと思われるものに語りかける様子を描く。





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