ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵 |
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戦車の上に乗っていたのは、ダンテの永遠の女性ベアトリーチェ。ベアトリーチェは戦車の上からダンテに声をかけ、ダンテの犯したさまざまの罪を責める。その罪の最たるものは、愛する女性ベアトリーチェを、青春の快楽を求める気持から、彼女の死後忘れてしまったということだった。 彼なほ輦の左の縁に立ちてうごかず、やがてかの慈悲深き群にむかひていひけるは 汝等とこしへの光の中に目を醍しをるをもて、夜も睡りも、世がその道に踏みいだす一足をだに汝等にかくさじ 是故にわが答への求むるところは、むしろかしこに泣く者をしてわが言をさとらせ、罪と憂ひの量を等しからしむるにあり すべて生るゝ者をみちびきその侶なる星にしたがひて一の目的にむかはしむる諸天のはたらきによるのみならず また神の恩惠(その雨のもとなる水氣はいと高くして我等の目近づくあたはず)のゆたかなるによりて 彼は生命の新たなるころ實の力すぐれたれば、そのすべての良き傾向は、げにめざましき證となるをえたりしものを 種を擇ばず耕さざる地は、土の力のいよいよさかんなるに從ひ、いよいよ惡くいよいよ荒る しばらくは我わが顏をもて彼を支へき、わが若き目を彼に見せつゝ彼をみちびきて正しき方にむかはせき 我わが第二の齡の閾にいたりて生を變ふるにおよび、彼たゞちに我をはなれ、身を他人にゆだねぬ われ肉より靈に登りて美も徳も我に増し加はれるとき、彼却つて我を愛せず、かへつて我をよろこばす いかなる約束をもはたすことなき空しき幸の象を追ひつゝその歩を眞ならざる路にむけたり 我また乞ひて默示をえ、夢幻の中にこれをもて彼を呼戻さんとせしも益なかりき、彼これに心をとめざりければなり 彼いと深く墜ち、今はかの滅亡の民を彼に示すことを措きてはその救ひの手段みな盡きぬ 是故にわれ死者の門を訪ひ、彼をこゝに導ける者にむかひて、泣きつゝわが乞ふところを陳べぬ 若し夫れ涙をそゝぐ悔の負債を償はざるものレーテを渡りまたその水を味ふをうべくば 神のたふとき定《さだめ》は破れむ(煉獄篇第三十曲から、山川丙三郎訳) 怪獣グリフォンに引かれた戦車に乗ったベアトリーチェと、その従者たち。ベアトリーチェは戦車の上からダンテに厳しい言葉をかける。 |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2016 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |