ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵
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聖ペテロ、聖ヤコブ、聖ヨハネ及びダンテとベアトリーチェ:ブレイクの「神曲」への挿絵



聖ペテロ、聖ヤコブの霊に続いて聖ヨハネの霊が現れる。そのまばゆい光に接したダンテの目は一瞬暗くなる。ヨハネは生きたまま天国に上げられたと伝えられており、ダンテはそのヨハネと同じく、自分もまた天国に生きたまま迎えられ、その喜びを分かちたいと思うのである。


 かくいひ終れる時、スペーレント・イン・テーまづわれらの上に聞え、舞ふ者ことごとくこれに和したり
 次いでかれらの中にて一の光いと強く輝けり、げにもし巨蟹宮に一のかゝる水晶あらば、冬の一月はたゞ一の晝とならむ 
 またたとへば喜ぶ處女が、その短處の爲ならず、たゞ新婦の祝ひのために、起たち、行き、踊りに加はるごとく 
 かの輝く光は、己が燃ゆる愛に應じて圓くめぐれる二の光の許に來れり 
 かくてかしこにて歌と節とを合はせ、またわが淑女は、默して動かざる新婦のごとく、目をかれらにとむ 
 こは昔われらの伽藍鳥ペルリカーノの胸に倚りし者、また選ばれて十字架の上より大いなる務を委ゆだねられし者なり。 
 わが淑女かく、されどその言のためにその目を移さず、これをかたくとむることいはざる先の如くなりき 
 瞳を定めて、日の少しく虧るを見んと力むる人は、見んとてかへつて見る能はざるにいたる 
 わがかの最後の火におけるもまたかくの如くなりき、是時聲曰ふ。汝何ぞこゝに在らざる物を視んとて汝の目を眩まばゆうするや 
 わが肉體は土にして地にあり、またわれらの數が永遠の聖旨に配ふにいたるまでは他の肉體と共にかしこにあらむ 
 二襲の衣を着つゝ尊き僧院にあるものは、昇りし二の光のみ、汝これを汝等の世に傳ふべし。 
 かくいへるとき、焔の舞は、三の氣吹の音のまじれるうるはしき歌とともにしづまり 
 さながら水を掻きゐたる櫂が、疲勞または危き事を避けんため、一の笛の音とともにみな止まる如くなりき(天堂編第二十五曲から、山川丙三郎訳)


絵は、中央下部に浮かんでいるダンテとベアトリーチェを囲む三人の霊を描く。左側から、聖ペテロ、聖ヤコブ、聖ヨハネの霊である。





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