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ーウィリアム・ブレイクの詩とイラストの世界ー

 煙突掃除の男の子 The Chimney Sweeper


  真っ白な雪の中に 小さな黒い生き物が
  悲しそうに泣き叫んでいる
  父さん母さんはどこ いってごらん
  父さん母さんは教会に お祈りにいったのさ

  ぼくがヒースの上でも楽しそうに遊び
  雪の中でも笑ってられるので
  父さん母さんは僕に死装束を着せ
  悲しみの歌を歌うよう教えたのさ

  それでも僕が楽しく歌い踊るのを見て
  父さん母さんは安心したってわけなのさ
  それで神様や牧師様や王様をたたえ
  ぼくのためには惨めな天国をくれたのさ
  


この詩は隠喩で満ちていて、非常に難解な作品だ。「無垢の歌」に収められた同名の詩は、辛い仕事の合間に、天使たちに導かれて遊び戯れる子どもらが描かれ、どこか救いを感じさせたのだが、この作品にはそのような救いが見られない。

小さな黒い生き物が「煙突掃除の男の子」であることは疑いがない。問題はその先だ、両親に死装束を着せられたとは、どんな意味なのだろうか。筆者はこの歌が、もしかしたら死んだ男の子を描いたのだと、思わずにはいられない。

そう解釈すると、なんとなくすっきりとする。両親は死んだわが子の冥福を祈るために教会にいくが、子供に用意された天国は、この世以上によいものだとは思えない、そう煙突掃除の男の子は嘆くのだ。




The Chimney Sweeper William Blake

  A little black thing among the snow:
  Crying weep, weep, in notes of woe!
  Where are thy father & mother! say!
  They are both gone up to the church to pray.

  Because I was happy upon the heath,
  And smil'd among the winters snow:
  They clothed me in the clothes of death,
  And taught me to sing the notes of woe.

  And because I am happy, & dance & sing,
  They think they have done me no injury:
  And are gone to praise God & his Priest & King
  Who make up a heaven of our misery.

  

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