HOME本館ブログ東京を描く水彩画あひるの絵本万葉集をよむプロフィール掲示板| サイトマップ

ーウィリアム・ブレイクの詩とイラストの世界ー

 不思議な夢 A Dream


  ある晩わたしは夢を見た
  天使が見守るベッドの上で
  一人のエメットが道に迷い
  草の上でわたしは寝ていた

  一人ぼっちで途方にくれ
  闇の中で疲れきって
  ちりぢりにもつれた枝のように
  エメットは悲しげに叫んでいた

  “子どもたちよ 答えておくれ
  お父さんの嘆きを聞いておくれ
  身を乗り出して道を探し
  お父さんのもとに戻っておくれ“

  可哀そうで わたしは泣いた
  するとツチボタルが答えていった
  “泣かなくても大丈夫
  僕は夜の見張り番!

  “ぼくが照らす明かりをたよりに
  カブトムシたちも行進する
  カブトムシたちのあとについて
  はやくおうちへ帰りなさい“
  


この詩は、夢の中の不思議な光景をうたったもの。エメットとはイギリスの民話に出てくる動物で、アリをイメージしているといわれる。Ant と Emmet とは同じ語源の言葉なのである。

夢の最初では、子どもたちとはぐれてしまったエメットの嘆きと呼びかけがうたわれる。わたしはその傍らの草の上に寝ころびながら、エメットの嘆きを聞いて涙をながす。

すると、ツチボタルが現れて、エメットに答えてやるが、その呼びかけはいつの間にか、私自身に向かっていわれているようにも思える。

意識の揺らめきが伝わってくるような、不思議な歌である。




A Dream William Blake

  Once a dream did weave a shade
  O'er my Angel-guarded bed,
  That an Emmet lost its way
  Where on grass methought I lay.

  Troubled,'wilder'd, and forlorn,
  Dark, benighted, travel-worn,
  Over many a tangled spray,
  All heart-broke I heard her say:

  "O, my children! do they cry!
  Do they hear their father sigh!'
  Now they look abroad to see:
  Now return and weep for me."

  Pitying, I drop'd a tear;
  But I saw a glow-worm near, 
  Who replied: "What wailing wight
  Calls the watchman of the night!

  "I am set to light the ground,
  While the beetle goes his round:
  Follow now the beetle's hum;
  Little wanderer, hie thee home."

  

前へHOME無垢の歌経験の歌次へ




                        


作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである