ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵
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盗賊たちと蛇:ダンテの「神曲」への挿絵



二人が声のする方向、すなわち第七の嚢へ向かってゆくと、そこにはおぞましい光景が展開していた。夥しい数の蛇が、これもまた夥しい亡霊たちに巻き付いて、かれらを責めさいなんでいる。これらの亡霊たちは、生前盗賊を働いたために、ここへ落されてきたものたちの亡霊だったのだ。その亡霊たちの、苦しむさまを見たダンテは、大いに驚く。

 我等は橋をその一端、第八の岸と連れるところに下れり、この時嚢の状あきらかになりて 
 我見しに中にはおそろしき蛇の群ありき、類いと奇しく、その記憶はいまなほわが血を凍らしむ 
 リビヤも此後その砂に誇らざれ、たとひこの地ケリドリ、ヤクリ、ファレー、チェンクリ、アムフィシベナを出すとも 
 またこれにエチオピアの全地または紅海の邊のものを加ふとも、かく多きかくあしき毒を流せることはあらじ 
 この猛くしていとものすごき群のなかを孔をも血石《エリトロピア》をも求めうるの望みなき裸なる民おぢおそれて走りゐたり 
 蛇は彼等の手を後方に縛しめ、尾と頭にて腰を刺し、また前方にからめり(地獄篇第二十四曲から、山川丙三郎訳) 

絵は、燃え盛る火炎地獄のなかを、蛇に苛まれて苦しむ盗賊の亡霊たちを描く。みな後ろ手に縛りあげられているのは、その手で他人の財産を盗むことができないようにするためか。





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