ブレイクのダンテ「神曲」への挿絵
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神を罵るフッチ:ブレイクの「神曲」への挿絵



傲岸不遜なフッチは、両手を高く上げ、指を突きだして神を侮辱する仕草をする。そこへすかさず蛇たちが呵責を加える。一匹の蛇は首に巻きつき、もう一匹が両腕に巻き付いて、彼を締め上げる。そのためフッチは貧乏ゆすりをすることもできない。

その様を見ていたダンテは、フッチ程傲慢な亡霊は、この広い地獄でも、他に見たことがないと思う。

 かたりをはれる時かの盜人雙手を握りて之を擧げ、叫びて曰ひけるは、受けよ神、我汝にむかひてこれを延ぶ
 此時よりこの方蛇はわが友なりき、一匹はこの時彼の頸にからめり、そのさまさながら我は汝にまた口をきかしめずといへるに似たりき
 また一匹はその腕にからみてはじめの如く彼を縛め、かつ身をかたくその前に結びて彼にすこしも之を動かすをゆるさゞりき
 あゝピストイアよ、ピストイアよ、汝の惡を行ふこと己が祖先の上に出づるに、何ぞ意を決して己を灰し、趾を世に絶つにいたらざる
 我は地獄の中なる諸圏の暗き獄を過ぎ、然も神にむかひてかく不遜なる魂を見ず、テーべの石垣より落ちし者だに之に及ばじ(地獄篇第二十五曲から 山川丙三郎訳)

絵は、ダンテらの見ている前で、神を侮辱するフッチに襲い掛かる蛇たちを描く。





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