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ーウィリアム・ブレイクの詩とイラストの世界ー |
ハエ The Fly |
小さなハエよ お前の儚い命を 私の無思慮な手が 払いのけてしまった 私とて ハエよ お前と同じではないだろうか お前こそ ハエよ 私と同じではないのか 私もお前と同様に 踊ったり飲んだりしているが いつか見えざる手によって 羽をへし折られないと限らない 生きることは思慮であり 力や勢いだとしたら 思慮の欠如が 死ぬことを意味するのなら この私もお前同様 幸福なハエに異ならない 生きていても 死んだとしても |
「ハエ」と題するこの詩は、心ならずもハエを払い殺してしまった話者が、ハエの運命を我が身に比較したものである。 ハエは人間の手によっていとも簡単につぶされてしまうが、その人間にしても万能というわけではない。飲んだり歌ったりして楽しく暮らしている間は人としての生命を謳歌しているが、いつ何時災厄に襲われて死んでしまわないとも限らない。だから人間の運命も、ハエのそれと五十歩百歩なのだ。 ここではハエと人間を超越する存在として、神の手が想定されている。つまり、神の手の前では人間もハエと同じく儚い命なのだといいたいのだ。 ブレイクの宗教観が漏れ出ている作品といえよう。 |
The Fly William Blake Little Fly Thy summers play, My thoughtless hand Has brush'd away. Am not I A fly like thee? Or art not thou A man like me? For I dance And drink & sing: Till some blind hand Shall brush my wing. If thought is life And strength & breath And the want Of thought is death; Then am I A happy fly, If I live, Or if I die. |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007
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