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ーウィリアム・ブレイクの詩とイラストの世界ー

 ティルザへ(ブレイク詩集:経験の歌)


  死すべき運命に生まれた者は
  現世の束縛から逃れるためには
  再び大地へ溶け去らねばならぬ
  だから肉は 私にとって何者でもない

  恥じらいと自惚れから肉は生まれ
  朝を謳歌しても 夕べには死す
  だが神の慈悲は死を眠りへと変え
  肉は再び起き上がって涙する

  死すべき私を生んだ母よ
  あなたは私の心臓を作り
  私の鼻、目、耳を作った
  残酷にも偽りの涙を流しつつ

  私の舌を粘土で作り
  私に死すべき命をもたらした
  私の自由をあがなうのはイエスの死
  だから肉は 私にとって何者でもない
  

「ティルザへ」と題するこの詩は、人間の死すべきものとしての運命と、永遠への希求を歌う。それはまた、肉体と精神の対立としても表れる。ブレイクは、肉の有限性を超越し、精神の無限をこい願うのであるが、それは彼の抱いていた清教徒的な心性を反映するものでもあるのだろう。

ティルザはブレイクにとっての肉の母として描かれている。おそらくブレイクの造語であろう。その肉の母が、欺瞞の中から子どもである自分を生んだ。だが、肉は自分にとって何者でもない。

私にとっての真の親はキリストだ。ブレイクはそう歌う。キリストこそ、自らの死を通じて、人間の自由をあがなってくれた。だから人間は、肉の親ではなく、心の親としてのキリストを尊ばねばならぬ。ブレイクはそういいたいもののようだ。




To Tirzah -William Blake

  Whate'er is Born of Mortal Birth,
  Must be consumed with the Earth
  To rise from Generation free;
  Then what have I to do with thee!

  The Sexes sprung from Shame & Pride
  Blow'd in the morn: in evening died
  But Mercy changd Death into Sleep;
  The Sexes rose to work & weep.

  Thou Mother of my Mortal part.
  With cruelty didst mould my Heart.
  And with false self-decieving tears,
  Didst bind my Nostrils Eyes & Ears.

  Didst close my Tongue in senseless clay
  And me to Mortal Life betray:
  The Death of Jesus set me free,
  Then what have I to do with thee!

  

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