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ーウィリアム・ブレイクの詩とイラストの世界ー

 人間の抽象(ブレイク詩集:経験の歌)

 
  貧しいものがいなくなれば
  憐憫もいらなくなるだろう
  みなが一様に幸福ならば
  慈悲が求められることもない

  気遣いは平和をもたらすが
  そこに利己的な愛が忍び込むと
  残忍さが罠をつむぎ
  人の心をとらえようとする

  神への恐れからひざまずき
  涙で地面をぬらす先から
  その足元には おぞましき
  人間の性が根を下ろす

  しかして人間の頭の上には
  神秘の木が影を広げ
  毛虫やらハエどもが
  神秘をえさに繁殖する

  神秘の木には欺きの実がなる
  赤々として甘い実だ
  すると大ガラスが木の陰に
  巣を作って子を育てる

  地上や海の神々は
  自然の中にこの木を探すが
  どこにも見つけることはできぬ
  人間の頭の中にあるからだ
    

「人間の抽象」という珍しい題名を付したこの詩は、人間の本性とその避けがたい結果について歌う。

人間たちが互いに気遣いあい、みなが平等で、貧しいものもいないならば、憐憫や慈悲といった言葉は意味を持たない。しかし人間には自己愛というものがあって、この利己心が互いを引き裂く。ここから人間は無垢の状態から引き離されて、おどろしい現実へと入っていく。

ブレイクはこうしたことがらについて、様々な比ゆを以て語っている。自己愛が育つのは神秘の木の陰であり、それは人間の頭の中に生える。したがって神々もそれを見つけることが出来ない。




The Human Abstract William Blake

  Pity would be no more,
  If we did not make somebody Poor:
  And Mercy no more could be,
  If all were as happy as we;

  And mutual fear brings peace;
  Till the selfish loves increase.
  Then Cruelty knits a snare,
  And spreads his baits with care.

  He sits down with holy fears,
  And waters the ground with tears:
  Then Humility takes its root
  Underneath his foot.

  Soon spreads the dismal shade
  Of Mystery over his head;
  And the Catterpiller and Fly,
  Feed on the Mystery.

  And it bears the fruit of Deceit,
  Ruddy and sweet to eat;
  And the Raven his nest has made
  In its thickest shade.

  The Gods of the earth and sea,
  Sought thro' Nature to find this Tree
  But their search was all in vain:
  There grows one in the Human Brain

  

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